ハンディタイプのレコーダー

いわゆるハンディ・レコーダーと呼ばれる小型の録音装置がありますが、現在は携帯電話やデジタルカメラなんかにも録音機能が付いていたりするので、改めて録音のためだけに購入する人は少ないかもしれません。ただ、ビジネスシーンや、趣味の楽器演奏の録音、さらには山奥に出かけて行って川のせせらぎ、自然環境音の録音など長時間の録音が必要な場合もあったりします(ない?)。ただ録音するだけなら簡易のラジカセでも可能ですが、大きさや重量、さらには録音の品質の問題もあって専用機にはかなわない面も多々あります。

現在はデジタル処理技術も進歩し、また記憶媒体も小さなメモリーカードが使えるなど、ひと昔前のカセットテープとは雲泥の開きがあります。プロの現場にはとてもかなわないにしても、例えばサンプリング周波数も、現在普及している音楽CDの44.1KHz以上のものが選択できる機種もあって、充分な性能を備えていると思います。

さて録音機器、ハンディ・レコーダーは世の中にいくつも存在しますが、ここではより便利なマルチトラック仕様のレコーダーなんかを紹介しています。ギターが趣味の私の好みでもありますが、バンドを組んでいるのならともかく、一人でギターとかやっていると多重録音できる装置というのは非常に便利なのです。

また、ハンディ・レコーダーの範囲からはずれてしまいますが、MTR(マルチトラックレコーダー)には高価になるほどトラック数も増え、保存容量も大きいものとなっています。機種によっては録音したものをそのままCD-Rに焼いてしまうものもあります。私は現在ほとんどパソコンとMTRソフトを組み合わせて録音していますが、外で使ったり、あるいはパソコンであるが故の不慮のトラブル回避のためにハードウェア機材のメリットも見逃せません。

ZOOM PS-02この写真はZOOM(ズーム)のPS-02という3トラック仕様のレコーダーです。購入してすでに何年も経っていますが、現在も使っています。比較のために100円ライターを並べていますが、この大きさですごい機能を装備しているのです。ただし、これはすでに生産終了のモデルとなっていて、現在はモデルチェンジした後継機種が登場しています。私のこの古いPS-02はハンディ・レコーダーとしても使えるのですが、購入した理由は別にあります。ていうか、そもそもコンセプトがとても変わっているおもしろい機材なのです。登場した時は結構衝撃的でした。これは単なるエレキギターを直結できる録音機ではなく、むしろギターの練習や曲作りにおいて便利に使えるアイデア商品だと思っています。

50種類のエフェクター機能を装備しているほか、ドラムマシン機能やベースパターンまで内蔵しています。つまりドラムパターンやベースを組んだあと、まだ3トラックの空きがあるので、そこにバッキングやギターソロを録音すればインストゥルメンタルが1曲完成します。さらにマイクも内蔵しているので、ボーカルやアコギもOKです。この部分だけ使えばハンディ・レコーダーと呼んでいいかもしれません。ZOOMはこういった小型のアイデア商品を作るのがうまいメーカーですね。曲のアイデアが浮かんだときに、すぐ実行に移せるのが最大の特徴です。

アコギの弾き語りと違ってエレキギターでロックするにはドラムがあったほうがいいし、音もある程度歪ませないとサマになりません。それがこれ1台で可能になります。ずいぶんお世話になりました。ちょっとひらめいたときに、わざわざ別途MTRを用意して、エフェクターをつないでメンドウな作業をやっていると、その間にアイデアも消えてしまったり、なによりメンドウだったのです。(後述しますが現在の安いMTRは機種によってはPS-02の機能を備えています)



ZOOM Handy Recorder H4 について

ZOOM H4
ZOOMは何種類かハンディ型のレコーダーを発表していますが、このH4は最近の人気モデルです。デジカメの感覚で、いつでもどこでも録音できます。曲のアイデアが浮かんだときなど、五線譜やメモ用紙などにすぐ表現できない音でも、その場で即録音できると確実にイメージが残って便利。24bit/96kHzのサンプリング、そしてリニアPCM(WAV)、またはMP3のフォーマットで保存できます。また、360度のサラウンド録音や、もちろん単なるMP3プレイヤーとしても使えます。※下位モデルにはH2があります。

さて、このH4は前述のPS-02と似た部分もありますが、後継モデルではありません。ドラムやベースパターンが内蔵されているのではないので、そういう使い方はできません。あくまでも高性能なハンディ型の録音装置と考えたほうがいいでしょう。

WAVファイルとして保存する場合、録音時間はMP3より短くなりますが高品位な音質で録音したい場合に有効です。最高24bit/96KHzのモードが選べます。一般の音楽CDが44.1KHzなので、倍以上の緻密さで録音することができます。また、内蔵メモリに記憶するのではなくSDカードを使用し、そこに直接保存するようになっています。市販の2GBのSDカードを使って、MP3で記録すれば最長4166分(70時間弱)録音できます。

このH4は、4トラックのマルチトラック仕様になっていますが、同時録音は2トラックまで。ただし一旦MIXして空き領域を作る動作を繰り返せば、理屈の上ではいくらでも音を重ねていくことができます。昔は4trのMTR(カセットテープやオープンリール)でそういったこと(ピンポン録音)をやっていました。ただし一旦MIXしたものは分離できません。全ての音を個々に操作したい場合や4トラックでは足らない場合は、8トラックや16トラックあるいはそれ以上のMTRが必要になってきます。その場合、もはやハンディレコーダーの領域ではありません。

内蔵マイクはX/Y方式という特殊なステレオマイクとなっています。ハの字型になっているのですが、収音ポイントが1箇所に絞られるため、左右の位相がズレにくい特性があります。また、マイクは外部接続もできるようにもなっていて、ファンタム電源を供給できるのでプロ用のマイクも使えます。またエレキギターなどライン機器を直接つなげられます。

エフェクターも内蔵されていて、アンプモデリング機能もあり、有名アンプのシミュレートもできます。また、ギターやボーカル用の一般に使われるエフェクトはほとんどプリセットされています。つまりこれはある意味マルチエフェクターとも言えます。そして4トラックと少ないながらもMTR機能を持っているのです。

また、パソコン用のMTR(DAW)ソフト「Cubase LE」がおまけに付いているので、パソコン上で多重録音などの編集操作が行えます。LEなので簡易版ですが十分使えます。ちなみに私はCubaseの弟分の「Cubasis」というソフトを今でも使っています。ココに、私がCubasisで多重録音した演奏ファイルがあります。ドラムやギターがごちゃごちゃ入っているヤツです ^^; ドラムとシンセパッドは打ち込み、ギターとベースが生演奏です。

結論を言うと、このH4はハンディ型でありながら、96KHzのサンプリングが使える高音質のレコーダーということです。MTRとしての機能もありますが、それはあくまでも付加機能。MTRとして多重録音したいのなら下に紹介しているようなものが同じ価格帯で買えるので、そちらを使うべきでしょう。さらにはパソコン用のMTRソフトも存在するので、人によってはハードウェアのMTR機材は必要ないかもしれません。私は両方持っていますが、現在ハードウェアのほうは単なるインテリアと化しています。

ただしパソコンで音楽をやる場合、ちゃんとしたサウンドカードは別途用意したほうがいいです。パソコンメーカーや機種、価格帯にもよりますが、初期にマザーボ−ドに埋め込まれているサウンドカード(チップ)はコストを下げるためにロクなものが付いていないことが多いのです。ヘッドホンを差し込むだけで分かります。音を再生していないのにザーザーシーシーと言ってますから。単体で売られているサウンドカードならまず大丈夫ですが、それでもステレオ出力端子が1穴のものと、ビデオデッキのようにLRが白赤と端子が別になっているものでは、同じステレオ出力でも音の分離がまるで違ってきます。ただしそんなサウンドカード(ボード)は高価です。ヘタをするとその金額でハードウェアMTRが1台買えてしまうので注意。また、サウンドカードといっても基版を差し込むPCI接続のものと、USB接続による外部BOX型とあります。

余談ですが、昔ローランドの外部BOX型を購入したことがあるのですが、ドライバがそのときのパソコンに適応しなかったせいで、全く使えなかったイヤな記憶があります。パソコンを使用する場合、とかくパーツ、あるいはドライバの相性問題が存在することがあるのがデメリットですね。特に私みたいに自作パソコンの場合、すべて自己責任になります。



ZOOM MRS-8 について

ZOOM MRS-8
これはZOOMのMTRで8トラック仕様の低価格モデルです。ハンディレコーダーH4と同じような価格ですが、目的が違い、このMRS-8は純粋なマルチトラックレコーダーです。音を重ねて楽曲を作るための録音機器です。ハッキリ言って10年前20万円以上したMTRより何倍も高性能です。笑っちゃいます。金返せコノヤロ〜

このMRS-8の記録媒体はSDカードになっています。1GBのSDカードを使えば最長6時間42分の録音が可能です。そしてH4とは違い、44.1kHzサンプリング(音楽CDと同じ)までしか扱えませんが、この価格で8トラック仕様なのが魅力です。また現在はもう当たり前の機能になっていますが、この機種にもバーチャルトラックの概念があります。各々のトラックに10本の隠れたトラックが控えているので、実質80トラック録音できるのです。なぜバーチャルなのかというと、あくまでも操作できるのは表の8トラックのみだから。

例えば1トラック目にギターソロを録音するとします。1発で満足する演奏ができるプロな人ならともかく、普通は何度も録り直します。しかし、場合によってはさっきの方が良かったということもあります。消しては次のを録音という作業では、以前のバージョンのほうが良かったものまで消えてしまいます。そんなときのために、この控えのトラックを使います。つまり1トラックにつき10回まで過去の履歴を残すことができるのです。とにかく10回分録音してみて、その中からベストなテイクを決め、それを表に出して実際に使うわけです。これがバーチャルトラックの概念です。

表に出してしまえば他の残り7トラックと並列に操作できます。つまり定位や音量をパート別にいじれます。バーチャルトラックはあくまで控えということです。グラフィックソフトなどでエフェクト処理したあと、再度以前の状態に戻したいことがありますが、あんな感じで使えます。これはデジタル機器だからできる技で、メモリに溜めておき、いつでも引き出すことができるのです。アナログ(カセットテープなど)では不可能なことです。このおかげでギターテクニックのなさを大幅に軽減できます。ツギハギだらけでも曲は完成するのです。便利な世の中になったものです。ただしそういう人(私)は人前でまともな演奏できない悲しさがあります ^^;

実はプロでもこうやって録音してるんですけどね。ヘタをごまかすんじゃなくて、より完成度を高めるためにね。現代のMTRは作品を残したい人には便利な録音装置です。もちろんパソコン用MTRソフトでも同じことができます。というよりパソコンの方が実はメモリやハードディスクを贅沢に使えて有利な面もあります。

スタジオ録音盤は完璧なのに、ライブでしかたなく同じ演奏しなければならないときどうするか。ビートルズのジョージは難しいフレーズのときになると観客に手を振ってごまかしていました(らしい)。私ならボリュームを絞って音が鳴らないようにしたあと、PAのせいにします。あるいは突然弦を切っちゃうとか、感極まって泣き出しちゃうとか、突然指が骨折したフリをするとか、歯で弾くとか、足で弾くとか、ギターをブチ壊すとか(リッチーブラックモアは壊し用ストラトを別途用意していた)、いろいろ考えてますよん。なんでそこまでしてライブをするのだ..根本的に

あ、いつものようについ脱線してしまいましたが、このMRS-8には8ドラムキット、5ベース機能も装備されています。ドラムは68種類の音源と8つのキットがあり、ドラムパッドが付いているので、実際にボタンを叩いて強弱やタイミングをリアルタイムに反映できます。ベースはエレキベースやシンセベースなど5種類が内蔵。

もちろんエフェクター機能も付いているし、なんとチューナー機能もあるので、たちまちはこのMTRさえあればエフェクターもチューナーも買う必要なし。それどころかドラムマシンもベースも要りまへん。必要なのは演奏テクニックだけ。その練習もメンドウな人は100パーセントMIDI打ち込みで作りましょう。実はそっちのほうがたいへんだったりする。経験者は語る。

ZOOM HD8CD
ちなみに、これはMRS-8より高価なモデル。同じMTRでもこちらはハードディスク(80GB)に録音するのが大きな違いです。倍の16トラック仕様で、バーチャルトラックはMRS-8と同じく各々10トラック、合計160トラック使用可。ドラムとベースの機能はより高品位になっていて、さらになんとサンプラー機能(サンプリングマシン)まで付いています。細かい機能はいずれもMRS-8より勝っていますが、HD8CDは、CD-R/RWを搭載しているので、これ1台で音楽CD(CD-Rですが)の作成までやってしまいます。パソコンを持っていない、あるいは別途データを移行してパソコンでCD-Rを焼くのはメンドウだという人に適しています。さらにはバックアップをCDに取れるのでハードディスクの容量を有効利用できるメリットもあります。



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